新しいダイアリー(5)

北海道コンサドーレ札幌と釣り

俺ガイル12巻をめぐる横浜周遊旅行

俺ガイル12巻の発売日であった9/20は、ひょんなことから、自然な書籍流通を久々に目撃することとなった

背景

そもそも、11巻までは7.5巻・6.5巻・10.5巻も含めほぼ均等に4か月に1冊のペースで刊行されていて、わたりんは生産力に秀でた作家であった。しかし、11巻が2015年6月に発売してから急に2年以上、DVD特典などを除いた新作小説が一切刊行されなくなった。アニメ終了とタイミングもぴったりであり、ありがちな「アニメがコケたので原作者がショックで筆を折ってしまった状態」に入ったかとも思われた。

しかしながら、谷川流(今でも新刊を待っています)のように、「一切音沙汰がなくなって生きているか死んでいるかもわからない状態」にはならないばかりか、江口拓也や堀井チャドと飲んでいる様子を共有するなど、刊行を待つファンには挑戦的ともとれる態度を取り続けていた。本業の方がどうかというと、2016年7月と2017年1月にクオリディアコード、2016年3月~2017年7月まではガーリッシュナンバーを月刊連載するなど、他のシリーズを精力的にこなしている。2016年夏ごろからは、これら他作品の告知ツイートをするたびにリプライ欄は荒れ、このアホ達は続きを読みたいのか作者を潰したいのかわからんなと思ったものである。(刊行ペース的に2015年冬に12巻が出ているべきともとれるが、上記2作品の準備期間と考えれば酷な事である。)

一方自分は、1巻こそ発売から結構たって買ったものの、2巻からはほぼ発売日に買い、だいたい発売日中に読み終わるため、ネタバレを受けないというかネタバレ自体を危惧していなかったが、アニメ開始後は読者も増えただろうということで今まで以上に早く読み終わることを意識し、10巻と11巻は発売日に休みを取って日の高いうちに読み切った。9/20も8月末の時点で休みの申請を済ませて待機していた。(娘の入院等で、休みが別の形で生かされることになったが。) 

当日の流れ

8時ころ

横浜駅のBOOK EXPRESSに12巻が売っていないことを確認。本屋といっても売店のデカいやつといったレベルの店だし、想定内であった

8時半ころ

10巻の時に早朝購入(その後神奈川県内を小旅行しながら読破)したBOOK EXPRESS大船駅店にも売っていないことを確認。しかし、妹さえいればいい8巻や、され竜20巻がちゃんと平積みで売っていることで、異変に気付く。Twitterで情報収集を開始したが、誰も入手した形跡がない。

9時ころ

  • アマゾンが発売日表記を9/21に変更した
  • 学生と思われる数多くのアカウントが「学校に遅刻orおさぼりして本屋来たけど売り切れていたすごい」とツイートしていて、心温まる

10時前

  • 桜木町BOOK EXPRESS・みなとみらい文教堂など回るがいずれもいれば8巻とされ竜20巻のみ
  • ナチュラルローソン限定グリーンカレーまんを食いながらさらに情報収集し、この時点では全国どこでも売っていないと結論
  • 岐阜のやつが「朝一で本屋にきたのに売り切れでコンテンツ力凄い」みたいなポストをしていて心温まる。岐阜で発売日に発売すると思ってるあたりが・・・周囲にそんなにオタクが住んでいると思ってるあたりが・・・

11時ころ

  • 横浜駅まで戻り、有隣堂西口もいればされ竜、そごうの上もいればされ竜であることを確認
  • 読破してから行こうと思っていた警察署に行って車庫証明の申請をキメる
  • 警察署付近の小さな本屋はガガガ文庫自体売っていない

12時ころ

  • 全てをいったん諦めて中華料理屋へ行く
  • 取次から最も近い大型専門店(すなわちとらのあな秋葉原)に荷物が届く
  • 数分後に山積みされ、俺ガイル12巻1冊だけを持ったオタクで長蛇の列ができる

12時半ころ

帰宅してPCでTwitterをクロールさせる。上記とらのあなの件を確認。結婚して以降、アニメイトとらのあなの類には一切入らないルールで生きているので、横浜で発売が確認できるまで家で別のことをする

13時ころ

  • 千代田区内の別の書店(一般的な書店)で入手報告あり
  • 放射状に入手報告がされるので、今まさに出荷中であることを把握

13時40分ころ

有隣堂西口で買った報告がついにされる。再び家を出る

14時ころ

横浜駅西口の有隣堂で購入。11時頃に行ったときはなかったが何故・・・

以降17時ころまで

  • 千葉・埼玉県内各所で入手報告
  • 千代田区で主力とは言えない本屋でも販売が開始される

  • 数年ぶりにドリンクバーに行ったり公園で怪しまれたりしながら読み進める 

それ以降

バレ感想が投下され始める。私も読了したので読書メーターにて「嘘は言っていないが本質とは全く異なる感想」を書いて終了。

21:30ころ

この生放送にて「まだほとんどの人が手にしていないから避ける」という旨のコメントをする。ちなみに刊行しないことについて暴言を言い続けてきたファンに対しては恐縮することなく、むしろ怒りの様相だった。 

以上が9/20の顛末である。新刊って言うのは本屋の棚に前夜とか早朝とかに納入され、開店前に並べられるものだと思っていた(いればされ竜はそうっぽいし)けど、何故こんなことに?と思って調べたのが以下。

搬入発売の書籍の物流の仕組み 

書籍は出版社から小売店に直接輸送されるものではなく、取次を必ず介する。

出版社⇒取次⇒各小売店

取次(トーハンと日版でシェア7割)は神田に集中(神田村)しているため、書籍は東京都千代田区から順に遠方に納入されていく。

①取次搬入日の中3営業日前午前中

出版営業が取次の仕入窓口に見本を持っていく
  • 希望部数を伝える
  • 部数の確認はX日ですという返答

②取次搬入日の中1営業日前午前中

部数確認・決定

③取次搬入日の午前中

新刊搬入口へと納品

渋滞や3M変更などで遅れることも

④取次搬入後すぐ

各小売り店舗向けの仕分け
  • 都内の超大型店にはその日の午後便で届く
  • それ以外の店舗は「取次搬入日=書店発売日」とならない

参考文献:書籍と雑誌の発売日 その2 - 備忘録(仕事と晩飯)

ちなみにアマゾンはこの慣習を破ろうとしている

アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ :日本経済新聞

この施策はきめ細やかな宅配便網に依存している。ご存知の通り、物流大手が料金やサービス内容の見直しによって即配路線から手を引こうとしているため、結局「書店発売日に読者の手元に」は完全には達成できない可能性が高いと思う。 

今回の件はこの「搬入発売」がしっくりくるが・・・

協定品の仕組み

一般の単行本ではよっぽどの話題作のみ適用されるが、コミック・ライトノベルの類では現在一般的な手法。

取次協会による発売日の決定

神田村で特定銘柄の出荷日を地区別に定め、公式発売日を各取次間で統一する

事前搬入

出版社が3日ないし2日で分割で取次に搬入し、取次搬入日~積込日当日の朝までに遠隔地から順次商品は出荷されるが、発売日前に書店入荷しないよう出荷日を調整する。

いれば・され竜はこれだろう。そうでなければあんなに朝早くからキレイに並んでないだろう。実際、ガガガ文庫はこの「協定品」である 。

参考文献:http://ariccy.blog.shinobi.jp/Entry/146/

今回に限り協定品じゃなくした?

ガガガ文庫公式アカウントが「書店によっては午後に発売する」と書いている

 

 

前日以前のツイートでは、ガガガ文庫もわたりんも「20日くらい」と濁している。しかし、

いればは20日と明言されていて、そのほかの作品も「頃」などついていなかった。これはやはり、文庫レーベルがそっくり協定品になっているが、何故か俺ガイルだけ搬入発売となったとすれば、しっくりとくる。

とおもったら書店ブログで裏が取れた。

comicbookstore.blog39.fc2.com

今月のガガガ文庫は「昨日入荷で、本日の朝から店頭出し」でしたが、こちらの「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 第12巻」のみ発売が延期されておりまして……

 

本日の午後便での配本で御座いました。

 

 

いやー

もー

 

昨日からお問い合わせが殺到!

今日も朝から聞かれまくりで御座いました(汗)。

orz

 

 

そして品出しした瞬間から売れる売れる……。

 

貫禄を見せて戴いた気分で御座います。

 

 

なお。

勤務先書店には三ケタの配本数でしたので、当分は安心して販売を続けられるのではないかと思われますですよ。

名推理

バレ防止のために1作品だけ取次搬入を9/20にしたのではないか説

協定品は協定を組んでいても、店舗への到着が狙った日より早くなる事象がどうしても発生するので、そこに「フラゲ店」が発生しやすい。俺ガイル12巻ではバレて困るような大きな物語の進行はなかったものの、結末の示唆に富む内容であったし、レーベルの稼ぎ頭だからこういう特別なことをした説。

編集都合説

ガガガ公式かわたりんか・・・どこかで「編集都合で・・・」と記載あり。何故か探せないので消えた?

あとがきがないことからも、12巻は相当急いで出したのではないか?(あとがきは一般的に本文の校正がすべて終了してから書くものらしい)よって協定品でありながら前日までに書店納入できなかったと

そもそもなぜ一瞬4/18発売と発表されたのか?書き直しに5か月かかるレベルの修正をしたのか?(少なくともイラスト変更必須なくらいの)などいろいろ邪推して、何となくこっちの説の方が強そう。なお、発売日に読了できたことには変わりないので最早どうでもよくなってしまった。

以下感想 

予想される物語の結末

[確定した]

  • 小町と大志が総武高校に合格した

もともと彼らの抱える問題は受験くらいなもの。これでシャンシャンなのかな。最終巻で八幡がキツくなった時に小町がちょいと助けてくれるくらいかな

[ほぼ確定した]

  • 物語中の3月末(12巻末からみて次月末)に平塚静退任

陽乃に「飛ばされるんでしょ?」と言われ、静は否定しなかった。雪ノ下母と刺し違えて退場するのだと切なすぎるので、八幡が何とかするんでしょ。というかして

[13巻もしくは最終までに片付けること]

  • 雪乃の相談解決(雪ノ下家の問題解決)
  • 隼人と雪乃の関係の整理(幼少時にデスティニー・・・まあディズニーランドに行っていることは語られた)
  • 奉仕部3名の共依存の解消
  • ガハマさんの戦後処理

ガハマさんはまだ雪乃に八幡への気持ちはあるのかと問いただしていないので、先走っている感はあるものの、12巻のラストで八幡獲得レースからの退場を決め込んでしまった感が強い。一方、雪乃はどこにプライオリティを設定して進んでいくのか?修学旅行後の一件が解決してデレてから、優柔不断さを増した感がある。どうカタがつくのか一層楽しみになった。ここはわたりんの生産力に期待して、11月に13巻を出してみてはどうか? 

スランプで書けなくなった場合の解決策でもあるにせよ、エースクラスの作家には代表作の合間に別の仕事をさせることはよくある(電撃でもよくやっている)。個人事業とはいえ、作家にとって出版社は食い扶持を維持してくれる「雇い主」と言って差し支えないだろうし、もし便利屋として2年間幽閉されたのだとしたら可哀そうだ。よくぞストーリーの逸脱もキャラの崩壊もなく新刊を出せたものだ。しかも発売日の午前中は誰も新刊を手に取れないという事件付きで、夜に生放送で胆力を発揮するとは、わたりんすごい。見直した。

簡単に言うと新刊が出たことで安心している。