スマホはやめなさい。レフレックスでもミラーレスでもよい。一眼を買いなさい。
と主は言った。
本記事は 北海道コンサドーレ札幌 Advent Calendar 2019 - Adventar 18日目の記事です。
本来は「コンサドーレの写真撮るの下手くそ選手権」というタイトルにするつもりでした。しかし、天にまします神が「今は写真を撮るという文化を維持することこそが重要だ」とお告げをくれたので、大きく軌道修正しました。
※本記事における写真は無圧縮を使用する予定でしたが、無圧縮がアップできないので、やむなく圧縮したものを使っています。
失敗写真を生んでしまう原因
ブレ
手ブレ
シャッターを押す際に姿勢が安定しないと縦にカメラが揺れます。これが手ブレです。
手ブレは長いカメラの歴史の中で補正方法が研鑽されていき、今ではどこのカメラにも手振れ補正がついています。
一眼レフ・ミラーレスカメラなどレンズが交換できるカメラには、手振れ補正に「ボディ内手振れ補正」と「レンズ内手振れ補正」があります。
どんなに発達した筋肉を持っていても、物理のシャッターボタンを押す限り、必ず微小な振動は起こります。
振動を0にするには、カメラを三脚で完全固定し、物理ボタン以外の方法(レリーズ、タイマー、Bluetooth操作など)でシャッターを切るしかありません。
しかし、俊敏なサッカー選手を撮影することにおいて、「カメラの固定」は「止まっている選手しか写せない」ということを意味します。
セルフタイマーの使用は、2秒後の未来が見えるスタンド使いではない常人にはおすすめできません。
そこで、手振れ補正機能に頼ることになります。
手振れ補正を搭載しているスマートフォンはごくわずかで、効果のほども小さく(iPhone11の手振れ補正は広角カメラだけ)、そもそもスマートフォンは軽すぎるので、シャッター動作で激しくブレます。
その点では、望遠レンズで3~4段(レンズと本体との組み合わせ次第でそれ以上も)の手振れ補正ができる一眼がサッカー撮影向きと言えるでしょう。*1
シャッタースピードの「段」については後述します。
被写体ブレ
カメラを固定していても被写体が動いてしまえば当然写真としてはブレます。
これが「被写体ブレ」です。
しかしながら、サッカー撮影において被写体に動くなというほうが無理なので、これはどうしようもありません。
露出設定で何とかすることになります。
iPhoneをはじめとした各スマートフォンでも露出設定が可能ですが、設定の幅と細かさが一眼よりもかなり小さいです。
露出については後述します。
収差
倍率色収差
本来シャキッとしてほしい輪郭がボケる(私は「輪郭が太る」と呼ぶ)現象です。
倍率色収差とは何か、補正する方法はあるかという解説が上記ページでされています
基本的にこの通りですが、修正可能量にも限界があるので、「倍率色収差を起こしにくいようなレンズ構成にする」と「現像ソフトで補正する」の合わせ技にて対応します。
私はニコンしか知らない*2ので、EDレンズというブツを紹介します。リンク先の文章は難しすぎるので、ごく簡単に言うと「ガラスの中で光を屈曲させているのにプリズムみたいに分光しないすごいレンズ」ということになります。このレンズを採用している製品は色収差を起こしにくいです。あとはレンズに別売りフィルターを付けるのもいいですね。スマートフォンにはせいぜいカラーフィルター程度しかつけることができません。
「現像ソフトで補正する」については、JPEGで保存せず、RAWで保存できることが重要になります。RAWとは、JPEGでは撮影後に変更できない様々な設定などを、撮影後でも画質を劣化させることなく変更できる形式です。最近はスマートフォンでも結構(形式としては)RAWで撮ることができますので、ここで言いたいことは「JPEGしか撮れないコンパクトカメラはやめとけよ」ということです。
タル収差・コマ収差
この現象はあらゆるカメラで発生します。非球面レンズなどを使って収差を抑えたレンズ製品を使うのがベストですが、そういうものはたいてい高いです。
格子状の模様を撮影すると非常によくわかるのですが、外側の枠が膨らんだように(樽型に)見えたり、凹んだように(糸巻型に)見えることがあります。写真現像ソフト・編集ソフトで補正が可能です。本体とレンズの組み合わせによっては、撮影時に補正も可能です。スマートフォンのような小型機ではレンズ設計に無理が生じるため、この現象が非常によく発生します。
1点から発した光は本来1点に収まるはずですが、口径の大きいレンズを使うと、画面外側に向かってフレアのようなものが現れることがあります。F値大きくする(絞る)ことで収差を抑えることができます。こちらも写真現像ソフト・編集ソフトで補正が可能です。
周辺光量落ち
画面の中心から周辺に行くにしたがって暗くなっていくことです。
絞ると軽減されます。
タル収差・コマ収差と同様に、ほとんどの写真編集ソフトで周辺光量落ちの補正が可能です。
インスタグラムなどでもよくあるように、周辺光量落ちは必ずしも失敗ではなく、写真の味であるという向きもあります。意図的にこの現象を発生させることも可能です。
実際、町田戦の画像も何となく味がありますよね。結果を示しているみたいで。
カメラのスペックの読み方
センサー
解像度(有効画素数)
有効画素数の言葉が示す通り、イメージセンサー1枚の中にいくつフォトダイオードが入っているかです。「解像度=画像ファイルの縦横の長さ」と思っている人も非常に多いと思いますが、そうではありません。かつて640x480の画像に対して「もっと解像度の高い画像をくれ」と言ったところ、縦横に引き伸ばしてサイズだけ4000x3000となった、モザイクみたいな画像をよこしてきたアホもいましたね。「1枚の画像の中にいくつの小さい正方形が詰め込まれているか」が解像度だと思えば簡単です。
「トリミングしろ」「回転しろ」*3を残すため、2000万画素以上(もちろんデジタルズームは使わない)で撮影できる機種を選ぶべきです。
しかし、最近ではこれ以下の画素数のカメラを探す方が難しいですね。
撮像素子(センサーサイズ)
だいたいCMOSでできているので構成は考えなくてもいいです。問題はセンサーの物理的なサイズです。
一般的に「フルサイズ」と呼ばれている35.9mm×23.9mmと、「APS-C」と呼ばれている23.5×15.6mmがあります。
レンズの焦点距離に影響しますが、レンズの名前になっている焦点距離の数値は全て「フルサイズ」の使用を前提としています。
「APS-C」のカメラを使うと、レンズに記載されている焦点距離が1.5倍になると思ってよいです。
詳しくは上記リンク先の通り・・・と言いたいところですが、このページだと全てにおいてFX>DXなのだと誤解されてしまいそうです。実際に価格はその通りですが。
センサーの縦横の長さは小さくても、その中にフォトダイオードがいくつ入っているかによって、解像度は変わります。小さいサイズの中に小さいフォトダイオードをギュッと押し込めると、後述するISO感度で高感度が弱くなります。
センサーまとめ
- ポスターを作るのでもなければ画素数は2000万もあれば十分
- 大きいセンサーサイズに小さい画素数で暗所に強くなる
- 小さいセンサーサイズに大きい画素数で暗所に弱くなる
- 小さいセンサーを使うと1.5倍ズームした絵が撮れる(広角には撮れなくなる)
連続撮影枚数(連写)
1秒間に何回シャッターを切れるかです。
サッカーを撮るならRAWで5コマ/秒は欲しいですね。8コマ9コマ撮れるものに手を出してもいいですがプロカメラマンの領域です。
露出・ISO感度
後述するカメラ設定が可能かどうかです。だいたい可能です。
カメラの設定の意味
露出
フルオート撮影ならば自動で調整されます。
基本的にカメラに露出を任せておけば、さまざまなシーンで適正露出の写真を撮影することができます。
しかし、写真によっては「より明るい方が良い」と感じることや「より暗い方が良い」と感じることがあります。
特にサッカー撮影においては、「明るいがブレている」「シャキッとしているが暗くてノイジー」が良く発生します。
絞り(F値)
絞らない(開放する)と写真が明るく撮れます。しかし、被写界深度(ピントの合う前後幅)が狭くなるため、ピントの合っていない場所(競り合ってる選手とかボールとか)がボケてしまいます。(そういうのが「味」とすることもある)
絞るほど写真は暗くなりますが、ピントの合う範囲が前後に広くなり、前述したコマ収差などが軽減されます。
シャッタースピード
読んで字のごとく、速いほど被写体ブレが少なくなります。しかし、速いほど写真が暗くなります。基本的に私はサッカー撮影時、このシャッタースピードを固定した、「シャッタースピード優先オート(S)」を使います。
ISO感度
前後に並んだ選手を両方解像したいから絞って撮りたいし、動きのあるシーンだからシャッタースピードを速くして撮りたい。この場合は暗い写真で我慢しなければならないかというと、そうではありません。
イメージセンサーの感度自体を上げてしまえばよいのです。
それがISO感度です。
もちろんいいことばかりではなく、センサーの感度を上げるほど、今度はノイズをよく拾うようになります。
常用的なのはISO6400くらいまで、最新機種でも25600くらいまでです。
リンク先の
これはマジでその通りです。
使用したいシャッタースピードと絞りを考えて、出来上がりが暗すぎる場合、ISO感度を必要最低限上げましょう。
連写
難しいことは考えず、RAWで撮れる限界の範囲で最大まで上げましょう。写真を撮る技術を向上させるためには1枚ずつフレーミングするのがいい・・・というのはめんどくさいカメラオタクに任せておけばよいことです。あとは風景写真家とか。
レンズの選び方
プレイヤーをクローズアップする場合
望遠ズームレンズ
135mm以上*4の焦点距離を持つズームレンズを望遠ズームと呼んでいます。スタンドとピッチの距離を考えると、まず1本はこれでしょう。
比較的ピッチが近い三ツ沢ですら、スタンド中断に座ってしまうと300mmまでズームしてようやくこの画角。少なくとも180mmの焦点距離が必要です。
日常生活では出番が限られるレンズでありますので、レンタルもいいでしょう。
それにしても本当に中野はかっこいい。川崎の谷口がイケメンとか言ってる奴の気が知れません。
高倍率ズームレンズ
18mm-250mmなど広角から望遠までカバーしてくれる高倍率ズームは、
- 広角が撮れる
- 望遠が撮れる
- 小さくて軽い
- 安い
と一見メリットだらけですが、
- F値が大きい(暗い)
- AFが遅い(ことが多い)
というデメリットがあります。F値は絞ればいくらでも大きくできるわけですが、開放した時の値は変えられません。表現の幅を持たせるため、なるべく明るいレンズを使いたいところです。
AFが遅いことに関してはMFを練習すれば気にならなくなります。ただし数年レベルの鍛錬になりますね。
広がりある絵を撮りたいor背景と一緒に撮りたい
広角ズームレンズ
大きい建物とかを背景に撮りたいならば、広角ズームの出番でしょう。
しかし、記者でもないのに大きい建物を背景にした選手の姿を撮ることが、果たして何回あるでしょうか。
あるとしたら、あえて広がりのある表現をしたい場合や、選手にかなり近寄ることのできるイベントや、下部組織の試合になるでしょうか。
広角単焦点レンズ
私は持っていません。
選手に接近して毛穴1つまで解像したいならこれです。
普通スポーツ撮影では使いません。「スタジアムの風景写真」ならいい感じですね。
広角で撮っておいてトリミングすれば望遠で撮ったのと同じか?
君がいい写真を取れないのは、 あと半歩の踏み込みが足りないからだよ。(ロバート・キャパ)
後でトリミングをしなければならないのは撮影時のフレーミングがアバウトだからだっていうのはわかります。
写真技術の向上を目指さないのであれば欲しい画角はちょっとならトリミングで作れます。
ただし、300mmの画角が欲しくて200mmで撮ったものをトリミングすると、画素の55%を失うことになります。大きいモニターで見たり、引き延ばし印刷には耐えられないものになるでしょう。
70mmで撮ったものをかなりトリミングして望遠みたいな画角にした例がこれです。過度なトリミングはやめた方が良さそうですよね。
望遠単焦点レンズ
https://www.yodobashi.com/product/100000001002294898/
えっ!?いきなりこれ買うんですか!?
能力はピカイチだけど高いしデカいし重いですよ?
止めはしないですけど・・・というかスタジアムに持ち込めるのか?
選手とツーショットを撮りたい
3m離れて50mm(APS-Cなら35mm)でバストアップで撮ります!以上!コーラを一気飲みしたらゲップが出るほど当然のことです。
本体の選び方
ここまででわかるように、写真の出来に寄与するのはレンズ>本体です。本体は結局のところレンズの力を全て引き出すことができれば、あとは何でもいいわけです。
よくわからなかった。結局何を買えばいいの?
D5600ダブルズームキットを買おう!
Nikon D5600に
の2本がついてくるという代物です。
よく考えてみたらiPhoneより安いですよね今。「他の機能は重視していないが、カメラを優先してiPhoneにする」というなら、中華スマホとこのD5600ダブルズームキットでいいわけです。
Q.センサーサイズが小さい(APS-C)みたいだけど・・・
むしろ1.5倍のテレコンを付けていると考えましょう。
望遠でしか撮影しないならむしろ有効です。
フルサイズ換算すると105mm-450mmと同等の画角になります。
暗所撮影の性能はフルサイズ機に劣りますが、ISO感度が25600まで使用可能なので大丈夫です。実際には3200程度まで上げてもギリギリ許せるノイズに抑えられます。
Q.55mmから70mmはカバーできてないみたいだけど・・・
そんな短い範囲なくても気になりませんよ!
実際、足で前後に動けばカバーはたやすいです。
D3500ではいけないのか?
いけなくはないですが。最大の弱点はバリアングルがなくなることです。
スタジアムで撮影するからには最前列を取りたいわけですが、当然ながら最前列は1列しかありませんので、取れないことの方が多い。
前の席に座った人を避けて撮影するには、カメラを持ち上げてモニターで絵を見ながら撮影する必要があります。
この時にバリアングルがないのは厳しいものがあります。
第二に、AFポイントが11点しかないことです。D5600の39点に対して大きく劣っています。
俊敏に動く選手の追従には、大量のAFポイントが必要ですが、11点では画面内に全くAFできないエリアができてしまいます。
ミラーレスではいけないのか?
私はZ6を使っています。決して悪くありませんが、ミラーレスには光学ファインダーがないため、EVFのわずかな遅延が気になります。
光より速く情報伝達できる手段は存在しないので、EVFで見ている絵の一瞬後が写真として切り取られます。
これを連写でカバーできると思うかどうかが導入可否の決め手だと思います。
他社ではいけないのか?
Nikonしか知らないので・・・同等品はあります(多分)。悪しからず。
まとめ
止まっているものや近くのものを撮るならスマートフォンでいいけど、遠くで動いているものを撮りたいとき、一歩踏み出して一眼に手を出すと、あなたの人生に彩りが加わることを約束します。
なお、どんな写真撮影にも言えることですが、くれぐれもTPOは考慮しましょうね。*5
それじゃ私は今から200-500mmを物色してきますから!
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